「真平へ」

「弟が亡くなりました」

自分の人生のログとして今までも文章や配信で言葉を残してきた人生だったから、辛いことだったけど自分の気持ちの整理のために文章を書かせてください。

3月16日、幸せな結婚式を終え代行タクシーを待っていた僕に1本の電話が入った。

弟が事故を起こした。

正直、またかよと思った。

9年前の3月3日、僕の3番目の弟が事故で生死を彷徨った。

その時は車と接触事故を起こし対向車線のトラックにぶつかり、身体中ボロボロになりながら1ヶ月ちょっとで意識を取り戻し、若干障害ぽいのは残ったけれど元気に復活した。それから結婚もし2歳になる娘もいて、やっと大学も卒業して仕事もし、社会人として1歩目を歩み出したところだった。

大量のお酒を飲んでいた僕はちょっと記憶が曖昧なのだが、車内でもらった連絡で前回との違いを感じ、多分これはもうダメなんだなと悟り泣きながら家に帰って次男の迎えを待った。

次男の車で病院へ向かうも、末っ子の弟から亡くなったと連絡があり、二人で落胆しながら病院へ行った。

病院では冷たくなった弟が横たわっており、僕は、どうしようもなくなって大声で泣いた。

みんなで泣いた。

前回より全然顔も綺麗だったのにね…

そこからはやらなければならないことが次々にやってきて、母も「なんか淡々と進むわね」と悲しそうに言っていた。

普段は頼りない末っ子だが、葬儀屋で働いていたのでとても頼りになった。

僕は泣き疲れたことと、お酒も飲みすぎていたことからとっとと病院の待合部屋で仮眠をとり、翌日や火曜日の仕事のことを考えていた。通夜と葬儀がいつになるのか…まだ弟の死を受け入れられていなかったのだろうと思う。

結局通夜が月曜日、葬儀が火曜日となり、翌日の日曜日は普通に仕事をさせてもらった。

正直家にいても何もすることがないし、かと言って弟が眠る葬儀屋で過ごすのも辛かった。そして何より、普段通り過ごすことが一番自分の中で楽なんだと直感的に思った。

よく美容師という仕事は親の死に目にも立ち会えないというが、まぁもちろん今はそんなことないんだけど、お客様に救われていると思う。美容をしている時間は僕を救ってくれた。

普段一緒に住んでいるわけでも、まめに連絡を取るわけでもない僕たちは、普段通り過ごすことが一番弟の死を実感しなくて済んだのだ。

通夜にはたくさんの方が参列してくださり、この場を借りて弟の死を悼んでくれてありがとうと伝えたい。僕自身素直な性格じゃないから、人前で泣きたくないなぁとか、残された奥さんと子供のことを思って泣くのも違うよなぁとか、なんかそんなことを考えちゃうんだけど、通夜では思っていた以上に涙が出てきて、あれ?おれ、なんで泣いてるんだ?とか考えていた。

そして、わかった。これが悲しいってことなんだな。

悲しいを受け入れることにした。みんなで泣いた。とてもとても悲しい。

普段髪を切っててもたいして喋らないし、髪型はいつも同じだし、面白くないし、酒を飲んだら声はでかいし、運転は下手だし、面白いこと言わないし、、

そんな弟だから亡くなったってそんなに悲しくないはずだって思ってた。そんなわけなかった。なんで通夜と葬儀と2回もこんな悲しい場を作るんだ!1回で終わってくれ!本気でそう思った。

それから葬儀があり、葬儀では昨夜で気持ちがやや整理がついたのか思ったほど涙は出なかった。

と思っていたが、棺に献花する時、そして斎場ではやはり泣いた。悲しかった。

でも、通夜、葬儀、斎場、そして初七日と終え、すこしずつだが気持ちの整理がついてきた。

日本人は勝手だ。うちの実家には神棚も仏壇もある。キリスト教のイベントもする。なんならうちの娘キリスト系の保育園に通う予定だ。

だが、宗教は救いを与えてくれるものだ。

28歳という若さで亡くなった弟だが、往生し極楽浄土へ行ったらしい。

そう言われたらそんな気がするし、そうだったらいいなと思った。そうやって皆救われた気がした。

さて、弟の死は事故死だったわけで、ネットニュースにも広島県のニュースにもなっていた。

記事には詳しく書いてなかったが、父親が言うにはどうやら弟が車に突っ込んで行ったということだった。

ニュースにも書いてあったが広島県の今年の死亡事故は20件目で、かなりのペースで亡くなっているらしい。

現場は9年前と同じ国道183号線で、とても事故の多い道路。片側2車線で右折レーンもなく、左斜線はバスも通る。ちょっとしたことですぐ渋滞が起き、一瞬の油断が事故を招く。

これを見てくれた全ての人が少しずつゆっくり走り、車間距離をあけ、譲り合って運転してもらえたらと願う。

真平へ

君のこの9年はなんのためだったんだろうな?大切な人を残して、さぞ無念だったと思う。

事故の瞬間は痛かったか?痛いとか思う前にいってしまったか?後悔したか?

お前はみんなに、命の大事さを教えてくれた。

残された家族で楽しくやっていくからさ、お前はあっちでゆっくりのんびり見守ってくれ。

そのうち、みんなで順番にそっちにいくからな。そしたらまた酒でも飲もう。

それまでにちょっとでも面白いこと言えるようになっててな!

またね。